「なるほどね、そういう意味だったんだ・・・」

ベンチに腰を下ろし、お弁当は膝の上。
そして香穂子は熱心にある本を読みふけっていた。












乙女ゴコロ













「へぇ、珍しいこともあるもんだな。お前が漫画以外の本を読むなんて」

「あー、ヒドイ土浦くん!!そりゃ・・・確かにいつもは漫画ばっかり読んでるけどさ」

むくれる香穂子の隣にドカッと土浦は腰を下ろす。
今日の土浦の昼飯は購買のパン。香穂子は母親が作ってくれたお弁当。
セレクションが縁で付き合い始めた二人は、お昼休みに中庭で昼食をとるのが日課になっていた。

いつものベンチに座る香穂子のいつになく真剣な横顔。
土浦が声をかけるまで、誰かが側にいる気配にも全く気づかなかったようだ。


「で、何の本読んでるんだ?」

「じゃじゃーん、なんとこれです!!」

香穂子の明るい声の効果音と共に、一冊の本が土浦の目の前に差し出される。
本のタイトルは「初めのサッカー 〜入門編〜」
土浦は驚いて目を見開いた。
香穂子とサッカー。
どこをどこ取っても繋がりそうにない二つ。


「なんでまたサッカーの本なんて・・・」

「そ、それは・・・サッカーの授業もあるし色々と知っておいた方がいいかなーと思って」

慌てる香穂子をおかしいと感じながら、土浦はこの前の日曜日を思い出す。
その日は、土浦属するサッカー部の練習試合があり香穂子は初めてその試合を見に来ていた。

サッカーなんてとりあえずボールを目で追いかけていればいい、と土浦に教えられ一生懸命に試合を見ていた香穂子だったが、まともにサッカーを見たことのない彼女にとってはそれすらも困難だったようでキョロキョロしてる内に土浦がゴールを決めてしまい、香穂子はひどく落ち込んでいた。
試合は勝ったというのに、彼女だけが今にも泣きだしそうな顔をしていたのが印象的だった。




「FWが攻撃の最前列に位置し得点するのが役目・・・、攻撃・・・」

文字を追う香穂子の瞳は真剣そのものだ。
だが、土浦にはその姿が無理をしているようにも見えた。


「無理すんなよ。興味のないこと学ぼうとすると、逆に疲れるだろ」

「興味ないわけじゃないよ!サッカー、観てて楽しかったよ。・・・土浦くんのシュートは見逃しちゃったけど。それに・・・・」

「・・・それに?」

なぜか香穂子は恥ずかしそうに俯きながら土浦から目を逸らす。
そして――――――――




「それに、好きな人の好きなもの・・・私も好きになれたらなって思ったんだ」

ふにゃと可愛く香穂子は笑った。
頬をピンク色に染めながら。

好きな人と同じものを一緒に楽しみたい、なんて子供みたいだと自覚している。
でも、隠し切れない乙女心。
直球でそんな言葉をぶつけられてしまった土浦は固まるしかなかった。
全く予想もできない攻撃を香穂子は仕掛けてくるのだ。いつも、いつも。
今もまた、弾丸のようにハイスピードのシュートを決められてしまった。
サッカー以外でこんなシュートを決められたことは初めてだ。


(・・・どう返事しろって言うんだ・・・)



土浦は何も言えないまま、サンドイッチにかぶりつく。
香穂子はそんな彼の様子に気づかないまま、また本に意識を戻す。
サラサラと心地よい風が二人の間をすり抜けていった。













いつも似たようなお話ばかり書いてるような気がします・・・。
その割には成長していなくてすいません。
好きな人の好きなものって気づけば自分もいつの間にか好きになっているような。
だからサッカーもルールを学べばもっと楽しく観戦することができるから、
日野ちゃんも土浦くんと同じくらいサッカー好きになることでしょう。

土浦くんに購買で何を買わせるか迷いました。
結局サンドイッチにしちゃったけど、おにぎりが良かったかなー?うーん。
おにぎりの方がいいかもと思ったら書き直そうと思います。



2005/06/15






uuhp